《事例紹介シリーズ2》プロキッチン×村式:経営論
前回は、ECビジネスにおける成功例としての「プロキッチン」をご紹介しました。
今回は、「プロキッチン」を運営する常陸屋さんの例から、ECに限らず、ビジネスにおける「ゴール」とは何を指すのかについてのお話を、少ししてみたいと思います。
プロキッチンの母体である株式会社常陸屋さん。
先述の通り、現在の社長は「人を中心とした仕事」というユニークな考えのもと、ピラミッド型の経営手法を手放しています。
社長以外は全員が女性スタッフ。中でも特に指定されたリーダーや役職を置いていません。誰が何をするかは、その場ごとに、自発的に、有機的に決まっていきます。
ピラミッド型の組織では、号令によって統制し、役割は固定化されています。人員の考え方も「ポスト」と見て、空きができれば、そこを補充する。組織という枠組みの箱の中に人員を入れるというスタイルです。数値的な目標を設定し、その達成を目指して活動します。
一方、同社のようなあり方では、それぞれが、得意なこと、やりたいこと、やれることでその力を存分に発揮して良い結果を生むことをゴールにおいています。社員はその部門や会社の「長」の方向を見て仕事するのではなく、「仕事」の方向を見て仕事をするというスタイルになります。
ですが当然、号令をかける上長はなく、売上の「目標金額」といったものも持ちません。
今回のリニューアルは、そのようなスタイルの組織で、いかにして良い結果を生んでいくか、ということへの挑戦でもありました。
村式はこのような経営のあり方に大いに共感しています。
プロジェクトはまず関係者一同で合宿をし、スタッフひとりひとりの気持ちや考えを聞き、共有しながら、ビジネス上の生存ラインを考え、自然なかたちで目標を立てていくところから始まりました。
村式では集中して濃い時間を共有し、その場でゴール設定までもっていく「合宿」を好んで取り入れ、社内でも実施しています。
まとまった時間を持つことで、その仕事に関わるスタッフ全員の心の中にある、普段アウトプットに至らない想いなどをつまびらかにでき、思わぬ解決のヒントが得られたり、無理のない方向性に導いたりすることが、多々あるのです。
プロキッチンの成功は、そのような、いわば「ホラクラシー」的な経営の成功であるかもしれません。
ホラクラシーという言葉は近年、目にすることが多くなっているかと思います。少々乱暴に言えば、経営から「旧来型のマネジメントを手放した形」であると言えます。中央集権的で階層をもつ上下の関係による働き方ではなく「自主」「自発」をメインにした働き方、とも言えます。
このあり方が賛否両論を生むのは当然のことです。
そんなやり方では会社は成長しない、機能しない、という意見も多数あるでしょう。
しかし現代のように成熟しきった社会において、「成長」とは何なのでしょうか。また、人工知能があらゆることを解決してくれそうな未来が近い今、「人間が働く」ことの意味はどこにあるのでしょうか?
そんなことを考えると、ビジネスのゴールと、人類のゴールとをかけ離れたところに置いておくには、少し退屈な気もします。
この話に、特に結論はありません。村式もまだ見ぬ未来への挑戦を続けています。