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TECチームに聞く!【生き物 × IT】ピースアクアリウムプロジェクトの技術構想(その1)


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村式のTECチーム(技術部)は普段、どんな開発をしているの?
そんな疑問にお答えするべく、エンジニアの視点から技術開発の近況をお伝えします。
まずは、「ピースアクアリウムプロジェクト」の技術責任者、中川尚による総論から。
いままさに進行中の自社事業における全体像をお伝えします。
 

村式では、10年目(11期目)のこの節目に、日本と海外をつなぐ「越境」プロジェクトにますます力点をおき、価値のある日本の商品を世界に届けるための新たなプロジェクトが動き出しています。
そのなかでも特に重要な事業のひとつとして位置づけているのが、平和の象徴である錦鯉を世界に届ける「ピースアクアリウムプロジェクト」です。この事業は、“生き物”と人間との関係のなかにテクノロジーを応用できる可能性を探る新たな試みでもあります。

このプロジェクトの技術責任者である中川が、このごろ「愛が増えている」とか「愛をもう少し増やしたい」ということをたびたび発言しています。このことはいったい何を意味するのでしょうか? 中川本人に、この事業の位置づけとともに今後の技術的な構想を聞いてみました。

より生物に“近づく”ためのテクノロジー

ーー村式のこの10年間の歴史のなかで、この錦鯉事業(ピースアクアリウムプロジェクト)は、どのような位置づけですか。

中川:これまで10年間やってきたこととは全く違う、新たなことにチャレンジしています。10年目の冒険をいよいよ始めようという思いですね。
ぼくはもともと未知なるものに対する好奇心が強く、日常的な仕事とは別に個人的な実験にも取り組んでいるのですが、そのような長年やっていた自由研究に、他のエンジニアたちも喜んで乗ってくれた。
ぼくの個人的な興味、各メンバーの関心事、そして会社全体の事業的方向性がすべて合致しています。

いままでは、PCやスマホの画面を介した仮想世界での表現を手がけてきましたが、今後はセンサーやモーター、映像や音声といった現実世界にアプローチする入出力手段が必要になります。そのような変化にともない、PHPやJavaScriptといったWeb分野のプログラミング言語のみならず、より汎用性の高いC/C++言語や、センシング技術、人工知能などを用いた開発が増えていくでしょう。事業領域の変化に応じて、ぼくらエンジニアも新たな知見を磨いていかなくてはと。

大型水槽と7匹の錦鯉が導入されてから、水の入れ替えとエサやりが スタッフの朝の日課になった。 大型水槽と7匹の錦鯉が導入されてから、水の入れ替えとエサやりがスタッフの朝の日課になった。
photo一匹一匹に「ごましお」や「金ちゃん」といった名前も付けられはじめている。

ーー「生き物」の有機的な世界にテクノロジーを導入した例はさまざまありますが、このプロジェクトがそのような前例と異なる点は何ですか。

中川:確かに、科学的な手段によって動植物とのコミュニケーションを取ろうとする試みは多々あり、そのアプローチ自体にはとくに新鮮味はないといえます。一方で、動物と人間との共生の場、つまり日常的な飼育環境にテクノロジーを導入しようとする試みはまだまだ少ないように思います。そのなかでも観賞魚を対象とする例は稀ではないでしょうか。
動植物の生態を解明しようとする学術研究や、家畜や乳牛の管理などにITを導入する畜産分野での研究はだいぶ進んでいるようですが、ペットとのふれあいのためにITを応用する試みにはまた異なる可能性があるのではないかと。

ーー手法自体も一般的な科学とは少し異なりますか。

中川:このプロジェクトは、錦鯉を科学的な“対象”として何かを明らかにすることが目的ではありません。そのような意味で、自然を解明し、理解しようとする学術研究などとは目的が異なるように思います。もちろん、データを得るために錦鯉を観測・分析はしますが、それはあくまでも動物と人間はもっと分かり合えるに違いない、共生のための環境をもっとよく出来るに違いないという信念を実証するための作業なのです。
ぼくたちの目的は真実を明らかにすることではなく、対象にもっと“近づく”ことにあります。生物と人間とのより善い関係性を見出し、それを強化させるためにテクノロジーを駆使出来ればと考えています。

photo「kinect」の赤外線カメラを用いて水槽のなかの深度情報を分析。
photo「コイバナ」の様子。村式では、錦鯉プロジェクトの議論をすることを「コイバナ」するという。

「ピースアクアリウム」の技術構想

ーー実際にどのようなテクノロジーを開発していますか。

中川:現在開発している主要な技術としては・・・


【1】各種センサーを使った「センシング技術」
【2】AIを搭載した「生体の状態分析技術」
【3】錦鯉に情報を伝えるための新技術

以上の3点に大別されます。

「センシング技術」は多種多様なものがありますが、大きく分けて対象となる生物そのものを観測するセンサーと、飼育環境を観測するセンサーとに分かれます。
対象となる生物そのものの情報を知るためには、通常のカメラに加え、深度(カメラからの距離)を測るカメラを搭載したモーションセンサーデバイスを使用します。まずは「動体」を認識することが、錦鯉との最初の接点になるのです。
一方で飼育環境を観測するセンサーは様々あり、水温、水質、PH値、酸素濃度などを測定する機能が代表的なものです。得られる情報が多いほど、生物にとって最適な条件を見極めるための手がかりになります。

続いて、このようなセンサーによって得られた情報をもとに、「生体の状態」を分析します。私たちはとくに“個体”を識別することを重視しています。目の前の鯉の外見(体型や模様)をキャプチャーし、コンピューターに学習させることで、個々の錦鯉を識別することが可能になります。目の前の“その子”を「個体識別」することによって、現在の体型や泳ぎ方から、健康状態を測ることが出来るかもしれません。
この「個体識別」の仕組みを精緻化させ、同種で非常に似た紋様の錦鯉であっても、異なるキャラクターであることを識別出来るようにすることが今後の課題です。

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photo2個体を識別するためのWebカメラを利用したテストの様子。

中川:3つ目の「錦鯉に情報を伝えるための新技術」というのはまだ全くの手探りですが、おそらくは人跡未踏の領域ではないかと考えられます。エサをやる以外の方法で、人間の側から感情(愛情)を鯉に伝えることは出来ないか、そのような夢を実現するための新たな手法を開発しているところです。
たとえば、人間が撫でる動作をしたり声を掛けると、そのメッセージを鯉が喜ぶ波動(音波や光波)に変換して伝えることが出来るのではないか。この領域はまだまだ未開拓の部分が多く、ぼくたちにとっても最も刺激的なチャレンジになるであろうと予想しています。

photo2水槽の天板を介して鯉をタッチすると情報を引き出せる特殊なディスプレイも開発中。画像は「天板ディスプレイ」のイメージ。

隣人との「愛」をエンパワーしたい

ーーこのような新技術の開発から、どのような価値が生まれると考えられますか。

中川:ぼくたちの開発の要点は、「個体識別」と「リアルタイム性」にあります。私たちが観測したいのは魚類一般の情報ではありません。目の前にいる錦鯉、特定の“その子”の情報をデータとして入手したいのです。
好意を寄せている異性のことをもっと知りたいと思う心理と同じで、“その子”のいま“現在”の情報を詳しく知ることで、こちらから何かしてあげたくなる。目の前の対象を「種」として捉えるのではなく、唯一の「個性」として知りたいという思いから愛情の実感が始まるのではないでしょうか。
種の異なる生き物どうしの相互コミュニケーションのなかで、取りこぼしているもの(意思疎通できていない情報)を、テクノロジーを使って上手くキャッチできるかもしれない。このような営みによって、生物と人間という異なる種の距離を縮め、互いにより“近づく”ことが可能になるでしょう。

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ーー最後に、テクノロジーチームの代表として今後の「ビジョン」をどうぞ。

中川:錦鯉が村式のオフィスにやってきてから、この場に行き交う「愛」の総量が増えたと感じています。愛の総量が増えていくことで、その周囲によい影響がもたらされる。それを、ますますエンパワー(強化)するために、テクノロジーを使っています。

当初は、「ヒト」と「コイ」のどちらかでいうと、まずは「ヒト」側のことから考え始めました。「コイ」がいることによって我々人間にどのような良い効果がもたらされるのかを思案していましたが、実際にふれてみると愛着がわいてきて、もっと近づきたい、伝え合いたいという思いが強くなってきました。「コイ」ともっと通じ合うことができるようになれば、やがては他の生命全体ともっと近づくことが出来るかもしれない。そんなことを夢見ています。
「隣人を愛する」というキリスト教の言葉がありますが、ぼくら人間どうしも隣人ならば、人間とともに生活している身近な生物たちもまた隣人です。「一隅を照らす」という仏教の言葉から想起されるように、ピースアクアリウムを体験した人に心の平和が生まれ、そこから周りの身近な人々、さらにその周りの人々にも・・・

テクノロジーを駆使して、愛する隣人をどんどん増やし、平和の輪を世界に広げていくことが出来れば何よりです。

photo2路傍のネコと触れ合う中川。果たして、この猫の感情に“近づく”ことは出来ているのか・・・

観賞魚や犬や猫など、身近な隣人たちとどこまで「愛」を深めることが出来るのか。
村式エンジニアの挑戦はつづく・・・

語り手:ピースアクアリウム技術責任者 中川尚
聞き手:石黒壯明

この記事を書いた人

石黒壯明

石黒壯明

2014年10月より村式に参画。事業の情報設計や日本文化的な視座によるコンセプトの創案、プランニングやエディティングなど、エンジニアリング以外の諸分野を担う。IT企業に居ながらにして、デジタル音痴でありWIFIをつなぐのにエンジニアの助けが必要。

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